【購入編】実印・印鑑証明書ってどこに必要なの?

実印を持っていない人もいるかと思いますが、不動産の売買をしたことのある人は持っているでしょう。あるいは、車をローンで買ったりしたときに慌てて作った人もいるのではないでしょうか。そして、この実印とセットになるのが印鑑証明書です。印鑑証明書があって初めて、『本物の実印』と言うことが証明されます。

不動産の売買をする際に不動産会社に「ご実印と、印鑑証明書を持って来て下さい。」と言われるかと思います。「印鑑証明書は何に使うのか。」を理解している人は少ないかと思います。この印鑑証明書は誰が必要としているかと言いますと、役所が必要としているのです。売買契約の相手方というわけではありません。(実際、売買契約の相手方から印鑑証明書を貰っている人はあまりいないでしょう。) 不動産売買の場合では、そのほとんどが登記の際に必要とされています。(「登記」のコーナーもご参照ください)

売買が成立して、所有権が移転しますと、たいていの場合が登記簿上の名義人も売主から買主に書き換えます(所有権移転登記)。(たいていとは、所有権移転登記はする義務がないからです。普通は登記すると思いますが)登記簿に新たに何かを書き加える際に、当事者本人が本当に了解しているかどうかを役所は確認します。了解の証拠として印鑑証明書付きの実印が必要になります。基本的に、役所は登記に限らず一連の手続きの中で損を被る可能性のある人からは印鑑証明書付きの実印を要求します。

損を被る可能性のある人ですから、不動産の売買をして所有権移転登記をする際には、売主・買主の両方の印鑑証明書が必要なわけではありません。売主側だけなのです。役所は『登記上損をする方』(実際の売買契約・その代金は関係ありません)にのみ本人の承諾を必要とするわけです。『登記上損をする方』とは『所有権の名義が無くなってしまう方』、要するに普通は『売主』ということになります。登記上『得をする方』の買主には承諾を取る必要がない。というのが役所の考え方です。

では、何のために買主からも印鑑証明書を必要とするのでしょうか。これは、たいていの方がローンを利用して不動産を購入するからです。金融機関がお金を貸す際には、購入した不動産を担保に取ります。このときになされる登記が『抵当権設定登記』と言われます。このとき『登記上損をする方』と言うのは誰かを考えますと、お金を借りる代わりに自分の(これから自分のものになる)不動産に抵当権を設定されるわけですから、『買主』と言うことになります。

このように、役所の手続きにはたとえ本人からの承諾が得られている場合でも、決まった書類等が揃わなければ受け付けてもらえません。その代わり、決まった書類さえ調えてしまえば、たとえ本人が知らなかったとしても役所はその手続きを進めてしまいます。不動産の売買に限らず、悪用される可能性は否定できません。実印の取り扱いについてはくれぐれもご注意ください。